
第6章 わが国の政策科学教育の現状と展望
1. 新学部と大学院との連関性
この調査・研究は、学部レベルの行政学、政策科学関連の高等教育機関を中心に考察してきたが、わが国ではこのような学部レベルの教育に比してむしろ大学院レベルの教育が先行している。すなわち、わが国の大学院において政策科学に関連する独立した研究科を有しているものには、まず埼玉大学大学院政策科学研究科があげられる。同大学院は、学部レベルのプログラムを有していない。いわゆる修士課程のみの独立大学院である。埼玉大学大学院政策科学研究科は、「現実の政策形成に有効かつ適切に資する可能性をもった学際的な政策研究の推進と政策科学の体系化と構築」ならびに「科学的思考と手法に裏づけされた政策分析と政策形成能力を備えた行政官・政策アナリストの養成」を目的として、1977年に設置されたものである。同研究科には、開設以来、各省庁や自治体から延べ250名以上の現職行政官が後述する派遣研修制度などを活用して入学している。このため、今日では「Mid−Careerの行政官の再教育を目的とした大学院」として重要な役割を演じている。
同研究科におけるカリキュラムは、科学的思考と手法に裏付けされた政策分析能力及び政策形成能力を向上させることを目的として、分析手法・分野別理論などの理論的側面と現実の政策問題を扱う実践的側面の双方を取得することができるように構成されている。特に、既成の特定学問分野に偏ることなく、政策研究の目的本位にバランスよくかつ手厚く構成されていることが特色となっている。すなわち、授業科目は、主として定量分析手法を学ぶ「情報数理科学」、記述的な分析手法及び政治・経済現象の理論的把握に必要な「政治・行政学」と「経済学」、現実の政策問題を扱う「行政分野別科目」の3つにによって構成される。また、「情報数理科学」、「政治・行政学」、「経済学」といった理論的科目は、理論のみならず実際的課題への応用や現実の政策分析を取り入れた実践性の高いものとなっている。さらに「論文作成」を通じて、講義で培った知識・技術・見識の蓄積の上に立って、特定の課題に沿った政策研究を総合的に実践する機会を与えている。
筑波大学大学院にも経営・政策科学研究科がやはり修士課程のみの独立大学院として、1976年に設置されている。同研究科は、その目的として、「高度の職業人の養成と再教育」を揚げ、「豊かな学識と分析能力を備えた職業的専門家の養成」が図られている。同研究
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